ルルモアさんはちょっとの間、おほほって笑ってたんだけど、
「ところで、幻獣は何か素材を落としませんでしたか?」
急に真面目な顔になってこんな事を聞いてきたんだよね。
「おお、そうだ。翼膜とまでは言わないが、皮膜だけでも残していたらうれしいんだが」
でね、それを聞いたギルドマスターのお爺さんも一緒になってお父さんにそう言ったんだけど、
「翼膜や皮膜ですか? いや、そんなものは残って無かったなぁ」
お父さんがそう答えたもんだから、二人ともしょんぼりしちゃった。
「ああ、でも何も残さなかったわけじゃないですよ。ただ、それは何故か透明な素材でできた大皿だったんだ」
「ええ、それにそのお皿、下が丸くなっているから使い道が無さそうなのよ。それに、妙に柔らかいし」
でもね、お父さんとお母さんが幻獣の残した物のお話をしたら、ギルドマスターのお爺さんがすっごく怖い顔してお父さんの方を睨んだんだよね。
だから僕、そんなのが落ちてたって聞いたギルドマスターのお爺さんが怒っちゃったのかって思ったんだけど、そうじゃなかったみたい。
「柔らかい大皿だと? それはもしや幻獣の魔核か?」
「魔核?」
「ああ、そう呼ばれているかなり貴重なアイテムだ」
ギルドマスターのお爺さんが、とにかくそのお皿を見せてって言ったもんだから、お父さんは借りっぱなしになってるマジックバッグから取り出して渡したんだ。
そしたら、その透明なお皿はやっぱりギルドマスターのお爺さんが思ってた通りのものだったみたい。
「間違いない。幻獣の魔核だ。これはまた、凄いものが残ってたもんだなぁ」
そう言いながら、ちょっと怖い顔でにかっと笑ったんだ。
「そんなに珍しのものなんですか?」
「ああ。幻獣を倒した後にこれが残っているのは本当にまれだと言う話だ」
さっきギルドマスターのお爺さんは翼膜や皮膜が残って無かったって聞いてたでしょ?
普通は幻獣をやっつけても、その二つのどっちかしか落とさない事が多いんだって。
「知っての通り、幻獣には普通の攻撃が通用しない。ここからも解る通り、皮膜や翼膜を使った防具は軽いのにダメージを通しにくいという特徴を持っているからこのどちらかが残っていても欲しがるものは多かろう」
ギルドマスターのお爺さんはそう言うと、ちょっとだけ怖い笑顔で僕たちに教えてくれたんだ。
「だがな、この幻獣の魔核と呼ばれるアイテムは、皇帝陛下や大貴族の方々が欲しがるくらい価値のあるものなのだ」
これを聞いて、僕やお父さんたちはみんなびっくりしちゃったんだよね。
だって、まさかここでそんな偉い人たちが出てくるなんて思わなかったもん。
だからな、何でそんな人たちが欲しがるの? って聞いてみたんだけど、そしたらその理由を教えてくれたんだ。
「この魔核には、二種類の特徴がある。そのうちの一つが、魔核と呼ばれるようになった理由でのぉ」
ギルドマスターのお爺さんが言うには、この幻獣の魔核ってのは魔石とおんなじようにすっごくいっぱい魔力が中に入ってるそうなんだ。
だからこれは幻獣にとって魔石の代わりになってるとこなんじゃないかな? って思ったもんだから、魔核って名前になったんだってさ。
「なるほど。魔石の代わりになるから、皇帝陛下や大貴族様が欲しがるんですね?」
「いや、そうではない。魔石の代わりと言うのであれば、これよりも多くの魔力がこもった魔石がダンジョンからは出ているからな」
幻獣の魔核って、普通の魔石よりおっきいでしょ?
だからお父さんは、これを偉い人たちが欲しがってるんだって思ったんだけど、ギルドマスターのお爺さんは違うって言うんだよね。
じゃあ、何で欲しがるのさ? って思って聞いてみたら、それはもう一個の特徴が関係してるんだよって教えてくれたんだ。
「この魔核はな、魔石とは違ってゆっくりと力をかけて引っ張ると1枚の透明な板になるそうなのだ」
「そしてその板はとても透明度が高い上に殆どひずみが無いから、職人が作るガラスよりはるかに窓に向いているらしいわ」
その上、幻獣の魔核で作った透明な板は他の素材とおんなじで普通の攻撃を通さないから、これを窓ガラスの代わりに使っとけば遠くから矢で射られても通さないし、悪もんがそれを割って中に入ってくる事もできないんだって。
「確かに魔法で攻撃されれば幻獣の魔核で作った板でも通り抜けてしまうかもしれないけど、そんな事ができる人はごく一部に限られるでしょ? だから帝城にある謁見の間や、皇帝陛下が終わす部屋の窓はすべてこれで作られているそうよ」
「なるほど、それならば確かに皇帝陛下や大貴族が欲しがるでしょうね」
これがあれば悪もんが来ても安心だもん。
だから幻獣がこれを落としたって持ち込まれたら、冒険者ギルドは必ずその場所の領主様に教えに行かないとダメなんだって。
「と言うわけで、この魔核は強制的にギルドが買い取る事になる。まぁ、その後は多分、領主様から皇帝陛下への献上品となるだろうな」
「そうなの? 領主様、自分で使いたいって思わない?」
領主様だって悪もんが来たら困るよね?
だから自分で使わないの? ってギルドマスターのお爺さんに聞いてみたんだけど、そしたらここでは多分いらないと思うよって言われちゃった。
「ここは大都市ではあるが、辺境だからな。近くに他国がある訳でもなければ、敵対する組織もない。そんな場所では小悪党や野盗程度ならともかく、領主の命を狙うようなものはおらんから、わざわざそのような高価なものを窓に使う必要はないのだよ」
「そっか。それだったらいらないね」
領主様には守ってくれる騎士様がいっぱい居るはずだもん。
だったら野盗とかが攻めてくる事なんかないだろうし、それだったらやっぱりもっと偉い人にあげた方がいいよね。
「それでもまぁ、帝都などに出かけるための馬車の窓になら使いたいと思うかもしれないが、そんなものを付けた馬車は大貴族でも持っておらんからな。そんな所に使ったら睨まれる事になるだけだから、皇帝陛下に献上するのが領主様にとって一番いいとわしは思うぞ」
ギルドマスターのお爺さんはね、
「身に余るものを欲すれば災いしか生まぬのじゃ」
って言って、おっきな声で、わっはっはって笑ったんだよ。
幻獣の魔核ですが、ゲーム時代は当然窓ガラスなんかには使われていませんでした。
当然ですよね。だってゲームではそんなもの必要ないんですから。
じゃあ何に使われていたのかと言うと、鏡を使ったマジックアイテムだったりします。
鏡を使ったマジックアイテムと言うと、遠くの場所を移すものとか二枚一対で遠くへと移動するための物、その他では封印に使われるものや呪いを溶く物とかが浮かびますよね。
ドラゴン&マジック・オンラインはテーブルトークRPGを元にしているのでその手のアイテムが多く、そのおかげでこのアイテムが高レベルになっても多く流通していたと言うわけです。
まぁ、設定があったところでルディーン君はこの事を知らないので、この幻獣の魔核を使って鏡のマジックアイテムを作る事は無いんですけどね。